ペトルーシュカ

この作品はストラビンスキーの3大バレエの一つで、ディアギレフのバレエリュスのために作曲され、1911年6月13日にパリ・シャトレ座で初演されました。ペトルーシュカは「バレエリュス」が残した最高傑作と言われています。全1幕4場。台本はブノアとストラビンスキー、振り付けはフォーキンによるものです。初演時の配役は、ペトルーシュカがニジンスキー、踊り子がカルサヴィナ、ムーア人がオルフ、人形使いがチェケッティという錚々たるメンバーで、大成功を収めました。ペトルーシュカとは他国ではピエロと呼ばれるお人よしで間抜けな道化の藁人形のことです。音楽はハ長調と嬰ヘ長調を組み合わせた和音が特徴的でこれは「ペトルーシュカ和音」と呼ばれています。元々はピアノとオーケストラのための曲として構成されたため随所でピアノが重要な役割を果しています。後にピアニストのルービンシュタインの依頼により「ロシアの踊り」「ペトルーシュカの部屋」「謝肉祭」の3曲をストラビンスキーがピアノ組曲に編曲しています。これは「ペトルーシュカからの3楽章」というタイトルで屈指の難曲として知られています。ストーリーと音楽は次のように進められます。

第1場 謝肉祭の市  サンクトペテルブルクの海軍省前の広場で催される謝肉祭の日です。祭りの喧騒と騒めきを描写する音楽が流れ、ドラムの音とともに幕が上がり人形使いが現れます。人々で賑わう見せ物小屋の一つで、人形使いが3つの藁人形を取り出し、横笛を吹いて魔法をかけました。魔法によって命を与えられたのは、道化人形のペトルーシュカ、真っ赤な頬紅を付けた踊り子バレリーナ、三日月刀を持ったムーア人です。人形使いが再び笛を吹くと、人形達は動きはじめ、舞台を飛び出しロシアの踊りを踊ります。人々は拍手をして喜びました。仕事を終えた人形使いは人形達をそれぞれの部屋に放り込みます。音楽は3つの曲から成っています。

①導入 群衆・・様々な民族衣装に身を包んだ人々が、断食の日を前に陽気に踊り祭りを楽しんでいます。

②人形使いの見世物小屋・・小屋の前に人々が集まると人形使いが笛を吹き人形たちに命を吹き込みます。

③ロシアの踊り・・人形たちの踊りです。ペトルーシュカはバレリーナに恋をしています。

第2場 ペトルーシュカの部屋  3体の人形たちの踊りが終わり、ペトルーシュカが暗く寂しい自分の部屋で沈んだ気持でいると、人形使いがバレリーナを連れてきます。ペトルーシュカは人形ですが人間のような感情を持っているのです。バレリーナがやって来たことを喜ぶペトルーシュカを見て、人形使いはまたバレリーナを連れ去り、ペトルーシュカを悲しませます。音楽はペトルーシュカの部屋というタイトルの曲が一つだけです。

①ペトルーシュカの部屋

第3場  ムーア人の部屋 ペトルーシュカの部屋とは違って、明るく広く豪華に飾られたいかにも快適そうな部屋です。

①ムーア人の部屋・・明るい南国のムードあふれる部屋、ムーア人は暇を持て余しています。

②バレリーナの踊り・・そこへバレリーナがやってきて踊ります。

③ワルツ ムーア人とバレリーナの踊り・・ムーア人とバレリーナがロマンチックに踊っているところに、ようやく自分の薄暗い部屋の壁を破ったトルーシュカが入ってきます。ムーア人とバレリーナの様子をみて嫉妬したペトリューシュカはムーア人襲いかかり大喧嘩が始まります。バレリーナは逃げ、ペトルーシュカも力の強いムーア人に負けて部屋の外に放り出されてしまいます。

第4場 謝肉祭の市 お祭りも夕暮れが迫り終わりに近づいています。断食を前に思う存分楽しもうと人々は次々に踊りだします。見世物小屋から出て来たペトルーシュカと半月刀を持ったムーア人の喧嘩を広場の人々とバレリーナが見守ります。遂にムーア人に切り付けられ死んだペトルーシュカを見て人々は大騒ぎ。警官に連れられてきた人形使いがペトルーシュカはただの人形だと説明し騒ぎは収まりました。人形使いはペトルーシュカの死体を引きずって小屋へ戻ろうとしたとき、不気味に変形されたペトルーシュカの主題がトランペットで鳴り響き小屋の屋根の上にペトルーシュカの亡霊が現れます。人形使いはあまりの恐怖にペトルーシュカの亡骸を捨ててどこかへ逃げて行き幕が下りるのです。音楽は次の9つからできています。

①乳母の踊り

②熊を連れた農夫の踊り

③行商人と2人のジプシー娘の踊り

④馭者と馬丁たちの踊り

⑤仮装した人々

⑥ペトルーシュカとムーア人の喧嘩

⑦終景ペトルーシュカの死

⑧警官と人形使い

⑨ペトルーシュカの亡霊

ペトルーシュカはロシアの民謡が使われていてストラビンスキーの作品の中では1番大衆性を持っています。そして舞台の動きを細かく計算に入れて作曲されていますから、無駄な音がありません。非常に多くの打楽器が使われていることも特徴のひとつです。また場面転換の雑音を打ち消すために場面の終わりに太鼓が連打されますが、演奏会などではこの部分はカットされることもあるそうです。ストラビンスキーの、「芝居小屋の人形たちがまるで命ある者のように動きだす」という発想をもとにバレエ・リュスのために作られたこの「ペトルーシュカ」という作品。謝肉祭の陽気な様子と人形たちの恋と殺人という不気味さの対比が不思議な魅力になっています。見終わった後、ペトルーシュカって本当に人形だったのかしら・・と不思議な気持ちになります。不思議は不思議のままで良いのです。見る人によって様々な解釈があってよく、感性で楽しむものなのだそうです。同様にバレエの演出も多様にできるため、演出家の意欲をかきたてる作品でもあるようです。

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