眠りの森の美女


眠りの森の美女はサンクトペテルブルクの帝室マリンスキー劇場監督官ウセヴォロジュスキーの委嘱で1889年にチャイコフスキーが作曲した作品です。18年間劇場監督官を務め、作曲家としても活躍したウセヴォロジュスキーは、当時のロシアバレエに満足していませんでした。一部の特権階級に支配されており、高額料金にも関わらず、公演の内容はマンネリ化していると感じており、その原因は当時の単純なバレエ音楽にあると考えていたのです。その頃のバレエ音楽は2流の作曲家によって書かれた踊りの伴奏としての単純なものがその大半を占めており、その代表的な作曲家はレオン・ミンクスでした。ミンクスと言えば「ドン・キホーテ」や「バヤデール」などで知られる作曲家です。耳触りがよく、調子のとりやすい魅惑的な曲を手軽に書いていたミンクスは、人気もあり、マリンスキー劇場で終身敵地位が保障されているかのような立場にいたのですが、ウセヴォロジュスキーはもっと芸術的に高度な一流作曲家の音楽をバレエに求めたのです。そして1881年ウセヴォロジュスキーの運営方針によってミンクスは失脚させられることとなり、代わってバレエ音楽の作曲はチャイコフスキーに依頼されるようになりました。チャイコフスキーの最初のバレエ作品は白鳥の湖で、モスクワ帝室ボリショイ劇場の監督官ベギチェフにより依頼されたものですが、楽曲の内容があまりにそれまでの音楽と違いがあり、観客には受け入れられませんでした。(小倉重夫によるバレエ音楽百科による)後にその真価が認められ3大バレエとして今なお全世界で演じ続けられるようになるこれらの作品が生み出された陰にはこのベギチェフとウセヴォロジュスキーの存在が不可欠であったということも忘れてはならないことだと思います。

バレエ眠りの森の美女はプロローグ付き3幕4場。原作はペローの童話「眠りの森の美女」、台本ウセヴォロジュスキーとプティパ、振り付けプティパ、音楽チャイコフスキーで1890年1月サンクトペテルブルク帝室マリンスキー劇場で初演されました。振り付けを担当した帝室劇場首席振付師プティパは、台本の各場面にどのような雰囲気の何拍子の音楽が、何小節必要かというようなことを細かく指定し、チャイコフスキーはその要望に添って作曲したのだそうです。完成した草稿(下書き)をもとにオーケストラ演奏用に編曲する際にはアダンやドリーブの作品を参考にしたと言われています。こうして出来上がったバレエ音楽は序章(プロローグ)とアポテオーズ(フィナーレ)、それに29曲から構成される大規模な曲となりました。チャイコフスキーはこの全てを交響楽的な作品に仕上げ、リラの精の主題や、カラボスの主題のようにライト・モチーフ(短い動機)を設定することで長い曲に一貫性を与えています。ストーリーを簡単に紹介しておきましょう。

プロローグ  場所はフロレスタン王の宮殿 オーロラ姫が誕生し洗礼式が行われています。招かれた6人の妖精が「優しさ」「元気」など良い性質を贈るために踊ります。そこへ悪の精カラボスがやってきて洗礼式典に招かれなかったことを怒り、オーロラ姫に「16歳の誕生日に糸紡ぎの針で指を刺して死ぬ」と呪いをかけました。リラの精はその時のオーロラ姫は死ぬのではなく眠りにつき、百年後に姫を愛する王子のキスで目覚めるでしょうと予言するのでした。国王は国中で糸紡ぎの針を使うことを禁止します。見どころは有名な6人の妖精の踊りです。

1幕 オーロラ姫の16歳の誕生日。禁止されている糸紡ぎをしている村人がいたけれど、国王は許してしまいます。オーロラ姫が4人の求婚者(王子)と踊ったあと、老婆がやって来て姫に花束を贈りました。その花束には針が忍ばせてあり、花束を持って踊っていたオーロラ姫は針で指を刺し倒れて眠ってしまいます。そこにリラの精が現れてお城の人々を全て姫と一緒に眠らせてしまいました。1幕の見どころはオーロラ姫が4人の王子と踊るローズ・アダージョです。

2幕  100年後 オーロラ姫の眠るお城のある森の中 デジレ王子が森を訪れるとリラの精が現れてオーロラ姫の幻影を見せます。美しい姫に心を奪われた王子はリラの精に導かれ姫の眠るお城へ向かいます。途中でカラボスを退治し、デジレ王子のキスでオーロラ姫は100年の眠りから目覚め、お城の人々もみんな目覚めました。そこで王子は姫に愛を告白し結婚を申し込みました。森の中でオーロラ姫の幻影と王子の踊るアダージョはとてもロマンティックで見ごたえがあるでしょう。

3幕   オーロラ姫とでジレ王子の結婚式。 フロリナ王女と青い鳥、長靴をはいた猫、赤ずきんと狼、シンデレラと王子などが次々に訪れ踊り、ふたりの結婚をお祝いします。そして金・銀・サファイア・ダイヤモンドの宝石の精たちが踊った後、オーロラ姫とデジレ王子が踊り最後はマズルカで締めくくられます。最後にリラの精が登場し二人は結婚。妖精たちを讃えるアポテオーズ(フィナーレ)の中人々は妖精達に感謝し、妖精たちは人々を見守り幕がおります。

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