リーズの結婚(ラ フィーユ マルガルデ)

ラ フィーユ マルガルデという表題は直訳すると「下手に監視された娘」、これは1791年ロンドンで再演されたときに付けられた名称で、初演当時は「藁のバレエ」という題名でした。バレエの作品のタイトルとしては少々わかりにくいので、日本では「リーズの結婚」、イギリスでは「わがまま娘」、ロシアでは「無益な用心」という副題が添えられています。これは現存するバレエ作品の中で最古のものと言われいますが、残っているのは台本と楽譜のみでした。初演は1789年7月1日フランスのボルドー大劇場でドーベルヴァルによる台本振付で上演されました。音楽の原曲の作者は不明ですが、それは当時の流行歌やフランスの民謡を編曲したものだったと言われています。当時の演出振り付けなどについては、後に舞踊史研究家が多くの資料を元にその情報を1冊の本にまとめました。その後1803年にパリで、初演時の音楽、ド―べルヴァルの台本振付で上演されました。その後1828年にパリで、エロルドが初演当時の楽譜をもとに新たに作曲したものや、ロッシーニやドニゼッティのオペラから借用したものを加えて編曲したものに、ジャン.オメールが振付して上演されました。そして現代ではバレエ団の音楽監督の経験もあるジョン・ランチベリーという指揮者が、この1828年にエロルドが編曲したものを更に編曲し、アシュトンが振り付けをしたイギリスのロイヤルバレエ団の作品が最も有名で、アシュトン版として世界中で上演されています。この他1864年にエロルドの音楽を一部取り入れながらもルードヴィヒ・ヘルテルが新しく楽譜を書き上げたものに、ポール・タリオーニ(マリ・タリオーニの弟)がベルリンで振り付けたものがあります。この時ヘルテルが作成したスコアを使って1885年にマリインスキー劇場のためにプティパとイワノフが改訂振付をしたものがロシア版と言われているものです。

さて2幕3場のこの作品が初演されたのは大革命が起こった年でした。世の中は混沌としていましたが、舞台はのどかな農村です。1幕は農家の庭 ~麦畑 一人娘のリーズは農夫のコーラスと相思相愛です。けれどリーズの母シモーヌはリーズを裕福な家に嫁がせたいと考えていました。そこへお金持ちのトーマスが息子アランとリーズの縁談を持ちかけます。シモ―ヌはリーズの気持ちには関係なく喜んでこれを受け入れます。アランは少々間の抜けたのんびり屋さん、いつもお気に入りの傘を持っています。コーラスが好きなリーズは彼には見向きもしません。しかし母親のシモーヌはトーマスと二人で、アランとリーズを連れて収穫時の麦畑へピクニックに行きます。しかしそのことを小耳にはさんだコーラスも後を追い、先回りして・・・コーラスの仲間達である麦畑で収穫中の農夫たちに、事情を伝えてはみんなでリーズとアランの縁談がうまくいかないように協力を求めます。そして農夫たちはみんなでリーズとコーラスを母親のシモーヌから隠れさせて2人の時間を作りますが、2人の密会現場を見つけたシモーヌを怒らせてしまいました。けれどそのときもシモーヌはうまくみんなにのせられてご機嫌で得意の木靴の踊りを披露してしまうのでした。1幕では冒頭の鶏のダンス、リーズとコーラスのリボンを持っての踊り、シモーヌの木靴の踊り、そしてカラフルなリボンのメイポールダンスと楽しい場面がたくさん。さて楽しく踊っていると突然嵐がきて・・・みんなそれぞれ家に帰って行き、アランはお気に入りの傘とともに風に吹き飛ばされて1幕は終わります。

2幕はリーズの家の中   シモーヌはリーズをコーラスと会わせないために鍵をかけて、糸巻の手伝いをさせて、家に閉じ込めています。しかしリーズは母親がうつらうつらと眠ったすきに窓辺にやってきたコーラスと愛を語り合います。
シモーヌが目を覚ますと農夫たちがみんなで収穫した麦を運んできました。、それを受け取るとシモーヌはアランとの縁談を進めるため鍵をかけて出掛けて行きます。部屋に一人取り残されたリーズは愛するコーラスと築き上げたかった幸せな暮らしを夢見て涙を流します。この場面はとてもあたたかでほろりと心が柔らかくなります。そこで、農夫たちが麦の束の中に隠して見事に家に忍び込ませたコーラスが突然飛び出しリーズはびっくり、二人は愛を誓いあいます。そこへシモーヌが帰ってきたのでリーズはコーラスを自分の部屋に隠れさせます。そして、それを知らないシモーヌはリーズが逃げ出さないように彼女の部屋に閉じ込め、花嫁衣装を着ておくよう命じました。さてアランとトーマスが公証人を連れてやって来て、いよいよ結婚の書類に署名をし、アランが喜んでリーズの部屋を開けると、そこには花嫁衣装を身に付けコーラスと抱き合うリーズの姿があったのです。シモーヌは大慌て、トーマスはカンカンに怒り大騒ぎになりますが、公証人の説得でリーズはめでたくコーラスとの結婚が認められるというお話。仲間に祝福され、リーズとコーラスは幸せに包まれてパドドゥが踊ります。そして皆が退場した後・・アランが部屋に忘れ物を探しにやって来て、お気に入りの傘を見つけるとそれを持って嬉しそうに帰っていくところで幕が下ります。

この作品が初演されたのはフランス革命が起こった年。社会は王政から民政へと移行する時期で、このような農民が主役のバレエは当時の人々に喜ばれたようです。アラン、トーマス、シモーヌと個性的な登場人物、ニワトリの踊りや木靴の踊り、カラフルなリボンを使った楽しい踊りなど、ストーリーは単純ですが見どころ満載で、ラブコメディですがどこか人間の優しさが感じられる明るく楽しい作品で、今も世界中で上演され、バレエファンに親しまれています。

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