ドン・キホーテ

原作はスペインの作家セルバンテスによる小説です。当時ヨーロッパで流行していた騎士道物語を読みすぎて妄想に陥ってしまった下級貴族の主人公が、自分自身が伝説の騎士だと思い込み、「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」つまり「ラ・マンチャ地方の騎士・ドン・キホーテ」と名乗って痩せこけた馬のロシナンテに乗り、従者サンチョ・パンサを引き連れて遍歴の旅に出かけるという物語です。音楽はレオン・ミンクス、プティパの振り付けで1869年にモスクワのボリショイ劇場で初演されました。物語の主人公はドン・キホーテですが、バレエではドン・キホーテは脇役で、宿屋の娘キトリと、床屋の息子バジルが主役の恋物語になっています。当時5幕11場という長大な作品でしたが、その後様々な振付師によって改作され、今では主に3幕仕立てで上演されていますが、4幕仕立てで上演しているところもあります。ここでは3幕でのバレエ作品としての「ドン・キホーテ」のあらすじをお伝えしましょう。

プロローグ  場所はドン・キホーテの書斎。騎士道物語を読み始めると仕事もそっちのけで夢中になってしまうドン・キホーテは、次第に中世の騎士道物語の世界にのめり込んでしまいます。自らを「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと名乗り、ドルシネアと名付けた空想のお姫様を助けるため、近所に住む少々間の抜けた百姓のサンチョ・パンサを従者に仕立て上げ、痩馬に乗り旅に出る支度を整えました。

第1幕  幕が上がるとそこは、輝く太陽の下 活気溢れる南国の町バルセロナの広場です。宿屋の娘キトリと床屋の息子バジルは恋人同士です。けれどキトリの父親は娘を金持ちの貴族ガマ―シュと結婚させたいと考えていて、2人の結婚を認めませんでした。父親はキトリに好意を寄せるガマーシュを連れてきて、キトリに会せますが、キトリは見向きもしません。そこに人気絶頂の闘牛士エスパーダ仲間を連れて登場し、恋人の踊り子も加わって華やかな踊りを繰り広げます。その時偶然通りかかったのが、奇妙な出で立ちのドン・キホーテとサンチョパンサ。ドン・キホーテはキトリを見て、それが物語に出てくる憧れのドルシネア姫だと勘違いして、キトリや友人達と舞踏会さながらに踊り出します。広場は大騒ぎ。そんな中キトリは親の目を盗んでバジルと逃げ出して駆け落ちを企てます。1幕では闘牛士エスパーダと仲間達の華麗なマントさばき、踊り子の妖艶な踊り、闘牛士たちの前でキトリが踊るバリエーションなど・・幕開きから見せ場がいっぱいです。

第2幕・第1場  広場から逃げ出したキトリとバジルは町外れの野原にやってくるとそこはジプシー達の野営地でした。バジルが恋人との結婚を反対されて駆け落ちしてきたことを話すと、ジプシー達は歓迎の踊りをたくさん披露して2人を受け入れてくれます。そこへキトリをドルシネア姫だと思い込んで追いかけてきたドン・キホーテたちも合流。ジプシー達が人形劇をして皆歓迎してくれたのですが、それを見ていたドン・キホーテはそのお話の世界に入ってしまい、劇に乱入。偶然にそのとき風が吹いて回りだした小屋の風車を見て、それが物語の中の悪者だと思い込み、やっつけようと跳びかかって行ったドン・キホーテは地面にたたきけられ気絶してしまいました。

第2幕・第2場 そこは気絶して眠っているドン・キホーテの夢の中。森の中で木の妖精とキューピットと一緒に、憧れのドルシネア姫が踊っているのを見て感激するドン・キホーテですが、すぐに目覚めて現実に引き戻されてしまいます。キトリとバジルは気絶したドン・キホーテを介抱していましたが、父親がガマ―シュを連れて追いかけて来たので、野営地を後にし、2人は居酒屋に隠れるのでした。ここで踊られる森の女王のバリエーション、キューピッドのバリエーション、そしてドルシネア姫のバリエーションは有名です。キューピッドたちもたくさんでてくるこの場面だけを「夢の場」として子どもの発表会などで上演されることもあります。

第2幕・第3場 酒場にはキトリの友人やエスパーダ、ジプシーの踊り子メルセデスも来ていて彼らの踊りが次々に披露されています。そこへ父親とガマーシュが現れキトリにガマーシュとの結婚を迫ります。困ったバジルは仲間と一計を案じ、キトリと結婚出来ないならと狂言自殺の大芝居を演じ、父親の承諾を得るのです。この3場ではエスパーダやメルセデス、キトリとバジルの踊りの他に、バジルの演じる狂言自殺のお芝居の場面も見どころです。

第3幕 再びバルセロナの広場です。ドン・キホーテとサンチョパンサも招かれて、キトリとバジルの結婚式が開かれるところです。招かれた大勢の人々によって華やかな踊りが繰り広げられます。キトリとバジルの踊りが終わると、2人の幸せを見届けたドン・キホーテはサンチョパンサを連れ、再び冒険を求めて旅に出るのでした。         
3幕はどこも見所満載ですが、極めつけは やはりキトリとバジルによって最後に踊られる、超絶技巧の見せ場がたくさん盛り込まれたグランパ・ド・ドウでしょう。
 

ストーリーは他愛ないものですが、明るい広場や暗い野営地、あるいは森の中、或いは酒場と次々と場面が変化し、様々な踊りによって物語がテンポよく展開されていく・・本当にバレエの楽しさを満喫できる作品です。

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